農泊ニュース

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自分たちがふるさとのためにやる

一般社団法人食・農・人総合研究所 リュウキンカの郷代表理事 本田節さん

 

農林水産省令和2年度農山漁村振興交付金 農泊推進対策(広域ネットワーク推進事業「農泊経営人材研修」)の実施事業者であります一般社団法人全国農協観光協会です。

農泊ニュース「農泊の現場から」ということで、九州は人吉球磨の本田節さんのお話を掲載させていただきます。

 

本田さんは先日の熊本豪雨で被災されましたが、現在再建に向けて頑張っていらっしゃいます。心よりお見舞い申し上げますとともに、心よりエールを送らせていただきます。

それでは、本田節さんの「自分たちがふるさとのためにやる」どうぞご覧ください。

 

九州は熊本、人吉球磨地方の一市四町五村のグリーン・ツーリズムは曲がり角を迎えていた。

農家民宿事業者の高齢化とそれに伴う後継者問題。物珍しさがなくなった農家民宿宿泊者数の減少、新しい取り組みが減り、活動そのものがマンネリ化。未熟な情報発信力。専従する地域コーディネーターの不在…本田節さんは、人吉球磨グリーン・ツーリズムの会員に、冒頭のように呼びかけた。

 

「やめるなら今だよ。」

 

会員たちは、「やめるならいつでもやめれる。もう一回本気でがんばりたい」と声をそろえた。

「あの時は本当にやめてしまおうと思いました。もう一回やりたいという言葉を聞いたときはうれしかったですね。私は本気でグリーン・ツーリズムに取組む覚悟を聞きたかったんです」

 

一般社団法人 食・農・人 総合研究所 リュウキンカの郷で代表理事を務める本田さんは語る。

ちょうど農林水産省が農泊推進事業に農山漁村振興交付金を出すタイミングであったことにも後押しされ、中間組織設立に舵を切った。

一般社団法人 隠れ里ひとくまツーリズム誕生のきっかけである。

「法人化するというということで、球磨川の川下り、くま川鉄道というローカル線、六次化産業の最たる球磨焼酎、この人吉球磨の地域を代表する他業種との連携を新たに作り直すことで、これまでの農家民宿・農家レストラン・体験に加え、新たなメンバーとなる旅館、ホテル、観光業など多様な構成による農業プラス観光と福祉のまちづくりを進めることになったんです。」

本田さんはただ連携を進めるだけでなく、法人設立に当たって、主要なメンバーに出資も求めた。

 

「会員たちが自分でその運営をしていくために資金を作っていくという意識、この意識が高まったことこそが、この決断で得られたものです。」

 

行政が何もしてくれない、補助金がなくなったから活動をやめる、というようなことは絶対にしたくないとも言う。

「補助金頼りで地域は持続できない。自分たちが自分たちのふるさとのためにやるんだ、っていうことですよ。」

そのためには、人材育成と交流の場が必要と、四年前にはあさぎり町の古民家をリノベーションして、研修施設「リュウキンカの郷」をオープンした。

「やはり学び直し、それと品質向上が大事だと思っています。いままでのグリーン・ツーリズムの基礎の上に立って、学び続けること、そしてなによりもこれからの若手人材、ワカモノやヨソモノや女性の視点が必要だと思います。それをはぐくむ場所にしたかったんです。いま一泊二日の研修ですけれども、私が地元にいる時のほとんどの時間はここで研修しています。「ムラたびカレッジ」ということで、九州七県の農泊のお母さんたちが大集合して先生になっております。また、インバウンド向け、ベジタリアン向けの食を学ぶことで、グローバルに開かれた農泊も支えていこうと思っています。」

実際、ムスリム向けの調理講習では、素材はもとより調味料に至るまで、さらには、食器に至るまで細心の配慮を行っているという。これはリスクマネジメントの一環。

 

これほどまで広く九州全体で「学び」を共有しながら、それぞれの地域を守っていこうと考える原点は何だろうか。

 

「私は、水俣にいらっしゃって、地域づくりの大先輩であった福田農園の福田興次さんにいつも言われてたんです。

 

「節ちゃん、どんなに夢とロマンを右手に掲げて地域づくりだといってみても、左手にね、やはりソロバンが必要なんだよ。

そのバランスがなければ持続可能な経営や、持続可能な地域を守っていくことはできないから。そのバランスをいつも考えなさい」と。

これが私の地域づくりの大きなコンセプトになりました。」

 

この大きなコンセプトがあるからこそ、「ソロバン」のバランスが悪くなるような組織の停滞は避けたかったという。それが冒頭の言葉につながる。

 

「私は法人化することが目的ではなく、法人化してこれからどう地域を守っていくかという覚悟がないといけないと思っています。そのために、地域の連携体制を見直し、泊・食・体験を分離して地域全体で一体的な経営をめざし、九州全体で農泊の品質を向上させようという広域連携体制を作ったんです。この裏づけで、それぞれの地域の農泊や農家レストランがより輝くようにしたいですね。」

わずか三十代で二回もがんと闘った本田さん。その闘いから帰ったのちは地域を守り、輝かせることを使命と考え活動してきた。その闘志はまだまだ衰えることなく、さらにパワーアップしている。九州の農泊からは目が離せないようだ。

 

※一般社団法人食・農・人総合研究所 リュウキンカの郷代表理事 本田節さんが昨年仙台で行われました東北版農泊サミットでの講演を元に記事にしております。

 

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